デザインは快適であれ

公開日
2016-02-12 05:41:52
更新日
2016-02-12 09:23:36

リアリティを重視した結果つまらなくなったゲームの話をする。

Steamで所持している数少ないゲームにRUSTというゲームがある。広い無人島をステージとし、その辺に沸いている木材や石で自分の好きなように家を作ったり、或いは武器を作って動物や同じサーバーにいるプレイヤーを狩ったりして遊ぶゲームだ。特に決められた目的というのは存在せず、いくら拠点を大きくしてもPvPでたくさんのプレイヤーを狩ってもシステム的には何も評価されない。プレイヤーはただ無人島で生活する
ことしかできない。

しかし、この無人島で生活するだけのゲームがえらく面白いのだ。拠点を作ってある程度備蓄が出来たら他のプレイヤーからの心温まる襲撃イベントが待っているし、運良く自宅にいる時に襲撃されたらこちらも武装して追い返したり、返り討ちにあったりできる。ご近所訪問で家の構造を把握し爆弾で壁を抜いてアイテムをかっぱらうこともできるし、アサルトライフルを構えて無差別に目に入ったプレイヤーを狩ることもできる。ただ夜に松明を持ってアメイジング・グレイスを流し、祈りを捧げることもできる。アラビア語を用いるプレイヤーの自宅の前で。

この自由度はシンプルなゲームシステムが保証している。フィールドの木と石と動物から取れる素材だけであらゆるものをクラフトできるし、キャラのステータスは余計な項目が存在せず理不尽な状態異常もない。ゲームを楽しく遊べる段階に至るまでストレスフリーでサクサク到達できるようになっているからこそ、好き勝手にやりたいことができるようになっている。

でもこれは旧版のお話。ある日、RUSTはゲームを一新した。旧RUSTよりリアルな表現になり、できることもより多くなった、ように見えた。ところがいざ新RUSTをプレイしてみると、とんだ期待はずれだった。リアルさを求めるあまり、旧RUSTにあった快適さが失われてしまったのだ。

例えばステータス関連の変更である。旧RUSTは満腹度と放射能汚染度に出血と骨折の状態異常しかなく、骨折は時間経過ですぐ快復し出血もリスポン時に最初から所持しているアイテムで快復できた。新RUSTではこれに加え水分ゲージが導入され、飯に加えて水分も摂取しないとスリップダメージを受けるようになった。体温の概念も導入され、極端に温度が振れるとスリップダメージを受けるようになった。

食料関連も大きく変更された。旧RUSTは全ての動物から同一の肉が取れ、それをただ焼くことで食える状態に持っていけた。新RUSTでは当然肉の種類は動物ごとに分けられ、そこから生成される肉も別の種類のものになり、焼きすぎると肉が焦げるようになった。

リアリティを求めた結果、プレイヤーが得ることになったのはデメリットだけではないか!

結局新RUSTは数時間でプレイすることをやめ、すぐに旧RUSTに戻った。今でもふとやりたくなることがあり、たまにログインしては無人島生活を楽しんでいる。スタートしてから楽しくなるまでをサクサク進められる方が自分には合っている。

楽しく遊ぶためにはあくまで快適にプレイできるゲームデザインであるべきで、それを阻害するような要素は大嫌いだということ。

これはゲームに限らずおよそあらゆるデザインが関わるものについて思っている。リッチな表現にこだわりすぎたWebサイトや余計な要素が次から次へと追加されるスマホアプリ、パッと思いつくだけでいくつも存在する。逆に使いづらくしてどうするんだ、デザインというのはそういうものではないだろうと。快適であることが第一で、装飾や付随する情報はそれを補佐するものであるべきだろうと。

ゲームだとファッキンクソUIもうやんねえよ!で済むけれど、それ以外だと仕方なく使わざるをえなかったりするのだけれども。健康に良くないね。